スタバの代名詞にもなってるサードプレイスを、都市社会学者レイ・オルデンバーグ
の観点から論じた本。
原題がTHE GREAT GOOD PLACEなので、副題にある「コミュニティの核になる
とびきり居心地よい場所」のほうが内容にはフィットする。

いずれにしても、まちづくり、教育、働き方などのテーマにおいて、お約束言語に
なってきた感のある「サードプレイス」の内容を社会学的に考えられて面白かった。

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サードプレイスは、家族と仕事の領域を超えた個々人の、定期的で自発的で
インフォーマルなお楽しみの集いのために場を提供する、さまざまな公共の場所の総称。
本書では「インフォーマルな公共生活の中核的環境」の意味で使われている。


イギリスのパブ、フランスのカフェに代表されるように、ヨーロッパでは散歩道、
公園のベンチ、軽食堂、ロビー、戸口でどこであれ人の集まるところで彼らが没頭している
膨大な無駄話を見ていると、飲酒より交流が目的のように見える。


オランダでも印象に残ったのは、明るいうちからどこかしこでも集まってワイワイ
楽しそうに話していた光景。しかも老若男女問わず!
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平日も休日も変わりなく。
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言葉はわからないものの、明らかにたいした話ではない感じ(笑)
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きがつけば楽しげな表情になっていた。。まちの雰囲気大事。
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パリの至高の価値は会話とカフェの都市であること。

とかく、サードプレイスというと場の内装や世界観、提供される食事などに
目が向きがちであるが、根本は会話の質。

ヘンリー・ドワイト・セジウィックさんによればヨーロッパのサードプレイスに
行き渡っているルールとは
①自分に割り振られた時間は黙ったままでいる
②他の人がちが話している間はその話に真摯に耳を傾ける
③自分の考えを言うが、他人の感情を害さないように気をつける
④誰もが関心をもつ話題でないものは避ける
⑤自分の個人的なことは極力話さず、そこに集まった人達について語る
⑥説教をしない
⑦他の人に聞き取れる範囲のなるべく低い声で話す

社会学者のフィリップ・スレイターさんによればコミュニティライフが存在するのは
「人が毎日特定の場所に行き、知り合いの多くと会えるときである」

サードプレイスが失われた原因のもうひとつにテレビがあげられている。
テレビは政治家にとっても都合が良かった。
人々が周囲から隔絶された状況で情報を受け取れば受け取るほど、メディアの支配者
たちに操作されやすくなる。
かた「情報ドーナツ」の穴で暮らすと表現されるように、テレビのニュースでも
地元区議会の動きよりも遠い世界のどこかの国の事故について多くの情報を得たりする。


個人的にも練馬の情報って日常に入ってないな、と感じる。

ロサンゼルスの新興住宅地の調査で生活に最も重要なもの1位は社交、2位が友情。
人と財産の安全は8位で静寂は最下位、利便性は安全より上程度。

自己啓発に代表されるようにアメリカで主流だった「私的市民(プライベートシチズン)」
は、公共に関心がある個人、または公共心に富む個人に取って変わると明言されている。

サードプレイスの期待される役割は多いと思うが、日常生活において個人的な関係を
もたないような相手と友好的な交流をもつ機会を提供してくれる場所。
居心地のよい場所のなかで、様々な「他者」と好意的な関係を築くことによって、
常連客独りひとりの視野が拡がり、より寛容な社会へと結ばれていく
というマイク・モラスキーさんの解説文の内容が一番腹に落ちた。