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よいリーダーは指示・命令する以上に、いつも相手に問いかけをしているもの。
ただやみくもに質問すればいいわけではない。よい人間関係の構築に役立つのは
「謙虚に問いかける Humble Inquiry」こと。 

聞くことの重要性は言われて久しいが、「謙虚に」というキーワードが本書の核。
またスキルというより、良い人間関係をつくることにフォーカスされているのも特徴。

社会学的な観点からは自分が話すのはワン・アップ(立場を上げること)、
言外で「あなたはこのことを知っているべきですが、まだご存じないでしょうから
教えてあげましょう」みたいなことを含んで示唆しているに等しい。

確かに、自分がべらべら一気にまくしたてるときは、完全にワン・アップされちゃってるな
と反省。。

質問をするのはワン・ダウン(立場を下げること)と説明され、会話の相手に力を
与えると同時に、一時的に自分を弱い立場に置くことになります。

ニュースキャスターやインタビュアー、コーチ、カウンセラーなど、役割、仕事と割り切れれば
別ですが、日常のビジネス環境では確かに弱い立場に自分を置くのは勇気がいりますね。

「謙虚に問いかける」は、相手の警戒心を解くことができる手法であり、
自分では答えが見出せないことについて質問する技術であり、その人のことを
理解したいという純粋な気持ちをもって関係を築いていくための流儀である。 

自分が共感できるとしたら、この単純に知りたいという好奇心。
逆説的には、どうすれば好奇心を持てるかの観察力かと思います。

「問いかける」というのは質問することを指す。
但し、古い頭で考えたタイプの質問であってはならない。
誘導的な質問、巧妙な言葉づかいで煙に巻こうとする質問、質問にみせかけた意見等等。

あくまでも相手を思いやる気持ちや純粋な好奇心、会話の質を高めたいと望む気持ちから
生まれる行為である。

テクニックとして質問を考えてしまうと対話は盛上がりませんよね。
相手が話しているときに次する質問考えちゃったりすることはよくあること。

「自分が動き、自分が話す」という課題の遂行を優先するせっかちな文化を持つ人達にとって
一番重要なのは内省を学ぶことです。
内省を学ぶ一つの方法は「謙虚に問いかける」を自分自身に対してやってみること。
すぐ行動に移す前に、自分に問いかけてみよう
「今ここでなにが起きているのか」「もっとも適切な対応はなんだろうか」
「私はいったい頭のなかで何を考えていて、心の中でどんなふうに感じていて、どうしたいと
思っているのだろう」

とっても耳の痛い内容です。
内省、振り返りがあってはじめてスピードは活きてくると学びました。

内省するということは、周囲で起きていることにもっと気づくようになる(マインドフルになる)
エレン・ランガーが提唱している「マインドフルネス」という重要な概念。
「ほかには何が起きていたのですか?」は呪文のように自分自身にぶつけるべき重要な質問。

本書で言いたいことは、自分の知りたいことを他者から聞き出したり、自分の考えを他者に
伝えたり、自分の思いどおいに他者を動かしたりすることだけを追求するスキルではない。
核心にあるのは、他者と良好な人間関係を築くという視点。

最後のマインドフルネスという概念にはとても共感します。
周囲で起きていることに、自分も他人も案外気づいていないもの。
周囲で起きている事実にもっとセンシティブになれば、好奇心も増すし、結果的に
謙虚に問いかけることができるように思います。

↓↓本書のベースにある「支援学」

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
エドガー・H・シャイン
英治出版
2009-08-08