土日に宮崎大学医学部地域医療・総合診療医
医学講座が主催する多職種連携教育コーディ
ネーター「ごちゃまぜ師」養成講座に登壇と
ファシリテーターを依頼され合宿に参加して
きました。

都農町が提携する宮崎大学医学部の吉村教授
と保健福祉センタープロジェクトでご一緒し
たのがきっかけで、UDSとしては初めての
大学医学部との取り組み案件となりました。

この講座のきっかけは、国内でも希少な総合
診療医(まち医者)の教育を推進する吉村教
授が提唱、国内では初めて宮崎県が県として
教育に取り組んでいる事業です。

これからの地域において医者不足や、医療費
増大の鍵を握るのが内科や外科など専門医で
はなく、医療・介護・福祉など、医療に関わ
る多職種の専門家たちの横串を通す、地域包
括ケアを担うことのできる総合診療医の育成
です。

吉村教授は、多職種連携教育コーディネータ
ーのことを親しみがわくように「ごちゃまぜ
師」と名づけて、今回で3年目の開講となり
ました。

講座は年間で3回の合宿で合計12講。
参加は県内を中心に、看護師、保健師、ケア
マネージャー(介護支援専門員)、理学療法
士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、
放射線技師など54名。

講座の目的は、多職種連携教育・協働のため
「場」を作り、「人」を集め、「コト」を
設計すること。

養成されたコーディネイターがそれぞれの
地域や施設で多職種連携教育・協働の核と
なっていくことを目指しています。

講座を通して、吉村教授を中心とする先進事
例から知識・ワザ・心構えの伝授や、グルー
プワークでの意見交換、理解の深化、輪の広
がりが見られます。

多職種連携教育を定義(英国「専門職連携教
育推進センター」)すると、複数の領域の
専門職者が、連携やケアの質を改善するため
に、同じ場所でともに学び、お互いから学び
合いながら、お互いについて学ぶことです。

原語では
Learning with,from and about each other。

元々は地域包括ケアのための取り組みですが
意味するところは、UDSにおける企画・設計
・運営によるまちづくり、あるいは最近、よ
く口にする人材育成におけるPeer to Peerと
同じ趣旨だと個人的には解釈をしてます。

実際に、吉村教授がUDSに興味をもち、参加
を依頼された理由も同様の趣旨を他の業種か
らのアプローチで受講者の理解を深めること
だと思います。

講演では、UDS、自分なりに考える多職種連
携のポイントとファシリテーションの心得を
1時間半ほど話しました。

多職種連携では、これはUDSの皆さんの日常
の仕事にも置き換えられますが、企画や設計
運営というそれぞれ自立した専門職同士が、
一体になって連携する価値と、実現する難し
さを私なりに話しました。

細かく言えばホテルにおけるフロントとレス
トランサービス、キッチンの関係性も該当し
ますよね。

受講者の皆さんも、ホテルにおける上記の話
はとても反応が良く、自分たちのおかれてい
る状況に似ていると共感をいただきました。

UDSの事例だけ見ても、通常、業界内で連携
しない職種が一体化することで差別化につな
がり新しい価値はつくれると思います。

少し拡げた説明もして、ビジネスに発展した
事例としてはキッザニアにおけるスポンサー
開発とコーディネイト、もう一つはコーポラ
ティブハウスにおける入居者間合意形成も
まさに多職種連携が利益を産んだ実績として
紹介しました。

受講者の皆さんと合宿の良さで深夜まで飲み
食いしながらざっくばらんに話しましたが、
共通して出たのが医療は聖域、医療と介護、
看護の溝でした。

とは言え、門外漢の私から見れば、同じく
聖域と主張されてきた教育界も世界ではミネ
ルヴァ大学、国内ではN高校、ゼロ高校など
の校舎を持たない教育や、イエナプランも含
めたオルタナティブ教育の開校ラッシュなど
起業家や教育外の分野の人が入ることで改革
が進んでいることからも、医療業界も別に、
特別ではなく、構造改革、地殻変動は起きる
と思っています。

もちろん、健康保険や介護保険など保険制度
や税制、政治に密着しているところなど、
内情聞けば積年課題として蓄積し、解決困難
でドロドロした話が多いですが、外部目線の
大切さは改めて感じました。

多職種連携の必要性を感じる現場の実感とし
ては、老人ホームで怪我をして病院に入院、
手術をへて車椅子で退院した際、病院側は、
退院すれば終わり、老人ホーム側は車椅子で
は受け入れ拒否となり、間に入る看護側が
右往左往、というようなことが頻発している
ようです。

解決するためには、入退院ルールや、医療、
介護、看護、理学療法士、作業療法士、言語
聴覚士など関係者が集まり、患者のために、
家族のために何がベストかを確認し合う場だ
ということですが、なかなかそのような場は
設けられず、仕切る人もいないようです。

その仕切る人となるのが、今回のごちゃまぜ
師となり、そのような場が都農町でつくろう
としている保健福祉センターなのですが、確
かに難易度は高いです。

それぞれが専門職なので、業務範囲意識が高
く、またプライドも高いのでより一層難しく
しているようです。

ただ、私が主張したのは設計の業界でも、一
級建築士の資格を持っているから設計ができ
るかというと全然そんなことはないように、
クライアントフォーカスやチームアップを
実現できる人しか仕事はとれないことでした

少し否定的に言えば、医療・介護の業界では
資格=仕事になっている節があり、ビジネス
マンとしてのコミュニケーションやマネジメ
ントに関してはあまり教育がされていない
印象を受けました。

そこはポテンシャルとポジティブに捉えれば
UDSとしても、連携が深まる空間のデザイン
と、ファシリテーションを組み合わせていけ
ば、かなり貢献できる余地があるな、と手応
えも感じました。

ファシリテーションについては、業界を問わ
ず共通する部分もあり、今回、良い機会だっ
たので、講演用に、自分がやってきたファシ
リテーションのまとめを原澤さんと即席パタ
ーン・ランゲージとしてまとめました。

今週のマネ研でもレクチャーに使わせてもら
いますが、ファシリテーションに関心ある方
はお気軽にお声がけ下さい。

地域医療、地域包括ケア、というと専門的で
難しくて自分ごとにしにくいですが、これか
らのまちづくりを考えると、一般市民にとっ
てはもっとも切実で重要な課題だと思います。

まずは今回、実際に現場で働く人たちの生の
声をたくさん聞けたことでリアリティーをも
って考えることができるようになったのは、
収穫でした。

場づくりと一体のソフトとして、UDSとして
強みにできる芽を探していきたいと思います

(2019/12/03_マネジメントだより_486)